Dear・・・

Bar[Keisuke.side]

慶介は店を出、辺りを見回す。


翔太の姿はすぐに見つかった。


壁にもたれかかり、遠くを見つめる翔太の姿。


翔太のその姿から、慶介は大体の事を察した。


「翔太?」


恐る恐る近づき、声をかける。


慶介の存在に気づいた翔太が、元気なさげにゆっくりと慶介を見た。


「親に…電話してたんだよね?」


愚問だといわれるだろうが、最後の望みに掛けたかった。


翔太からの返事はない。


無言で見つめる翔太のその瞳に、慶介は深い恐怖を感じる。


見詰め合ったまま、沈黙が続く。


そして、その沈黙を最初に破ったのは翔太だった。


「ねえ、あのオッサン、誰?」


「あの人は――」


「言い訳は聞きたくないからね」


慶介の言葉を遮り、翔太が釘を刺した。


これから自分の口から出てくるのは、自分を庇うためだけの言い訳なのは慶介が一番理解している。


慶介は返す言葉が見つからず、唇をかみ締め俯いた。


翔太はゆっくりと慶介に近づいていく。


そして、慶介の腕を力強く引き、そのままの勢いで抱きしめた。


慶介の肩に顔を埋める。


慶介は目を見開いて驚き、身動き一つ出来ない。


慶介を抱きしめる翔太の力は段々と強くなって行くが、反面その抱きしめる腕は震えていた。
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