Dear・・・
「なあ、慶介」


その声は心無しか震えている。


「俺、お前が考えてる事全然わかんないよ…」


慶介は返す言葉が見つからない。


しばらく沈黙が続く。


「俺はどうしたら良い?」


消え入りそうな声で言うと、翔太は慶介の顔を見ることなく、慶介から離れ店の中へと入っていった。


慶介は、翔太に想われているのは痛いほど知っている。


そして慶介も、何よりも翔太を想っている。


しかし、それを受けとめる勇気がない。


やはりどこかで疑ってしまう。


自分自身がやるせなかった。


しばらく、風に吹かれ気を落ち着かせると慶介も店へと入っていった。



慶介は先ほどの席に座り、ビールを一気に飲み干す。


翔太とは一切目が合わない。


博昭は何かあったのかと勘ぐり、黙って二人の行動を見る。


「あれ?ひろちゃん今日全然飲んでないじゃんー」


博昭の肩を抱き、智貴が言う。


「明日、朝から彼女とデートだから」


「えー博昭くん彼女いるの?」


残念そうに女が言った。


「まあね。先月の合コンで会ってさあ、一個上でかわいいよ」


と、照れながら話す博昭。

周りがちゃかしに入る。


博昭狙いの女はどうにか自分が入れる隙がないかと、くいつく。
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