Dear・・・
スーツ姿で夕食の準備をしていたおかげで、ポケットの中に小銭入れが入っている。


小銭入れを握り締め、近くのスーパーでパック詰めされた寿司を買い、家へと帰っていく。


玄関の開く音が家中に響く。


和也は急いで部屋から出て来ると、一階へと駆け下りた。


治も、玄関へと向かう。


青ざめた顔の香子が玄関に佇む。


「どこ行ってたん?」


和也の心配そうなその声が、香子の胸を刺す。


「気分、悪くなってご飯作れそうになかったから、スーパーに晩御飯買いに行っててん」


そう言い、香子は手に持つ袋を和也へと手渡した。


和也はそれを心配そうに受け取った。


「大丈夫なん?」


「大丈夫やねんけど、ちょっとまだしんどいし、横になってくるわ。悪いけど、綾とお父さんにこれ出しといてな。後、お風呂はもう洗ってあるし。せや、洗い物も――」


「後は俺に任せて!もう中学生やねんし家事ぐらいできるわ!」


一向に話を止めようとしない香子の言葉を和也が遮った。


母の言葉が鬱陶しい訳ではなく、母の事が心配なあまりの行動だ。
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