Dear・・・
香子は息子の本心を読み取り、優しく微笑んで礼を言うと、ふらふらとしながら二階へと上っていった。


その間、一度も香子は治を見なかった。


和也はダイニングに行き、テーブルにパック寿司を並べていく。


そして、二階の綾を呼んだ。


綾が降りてくる前の僅かな時間に風呂を沸かす。


「あ。オッサン、飯」


席に着いて綾を待っている時、思い出したかの様に父を呼んだ。


治は薄い反応を示し、席に着く。


「ああ、お寿司や。今日、トンカツやってお母さん言うてたのに」


「お母さんしんどいねんて。綾、お寿司好きやろ?わがまま言わんと食べや」


兄の言葉に綾は頷き席に着く。


和也と綾は、楽しそうに会話をしながら食べていく。


その横で、治は神妙な面持ちで無言で食べていた。


治の頭の中は、何年かぶりに香子のことでいっぱいだった。
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