Dear・・・

昼[Keisuke.side]

翔太が昼過ぎに、慶介を迎えにやって来た。


慶介は断る事も出来ず、電車で翔太と二人で仕事場へ向かう事になった。


翔太から無言の圧力を感じる。


特に会話をする事無く、二人は電車に揺られる。


「あのさ、翔太」


この空気に耐え切れなくなった慶介が口を開いた。


「昨日のことなんだけど――」


「昨日も言ったけど言い訳なんか聞きたくないから」


「違――」


「謝罪も一緒だよ」


心の中を見透かされたように、せっかく意を決し謝ろうとしていたのに無残にも打ち砕かれる。


途端に慶介は何を話せばいいのか分からなくなり、慶介は黙り込んだ。


翔太は、慶介を見る事無く先ほどからずっと窓の外を見ている。


そして、慶介を見ないまま翔太が言った。


「もう、忘れようよ。俺、気にしないから。何もなかった事にしよう。それにあれだけ言ったんだから、きっと向こうも二度と連絡してこないよ」


笑顔で話す翔太に、慶介は恐怖を感じた。


翔太は一体何を言ったのだろうか。


気にかかるものの、聞けるはずもなく翔太の言葉に、慶介は笑顔で頷いた。


と、慶介の携帯が着信を告げた。


瞬間、慶介の顔が曇る。


「誰?」


低い声で尋ねる慶介に、慶介は急いでディスプレイを確認した。
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