Dear・・・
俺の心を締め付けていた何かが体の外へと抜けていった。


気が抜けると同じく、体が軽くなった。


視界が晴れ、世界が明るく見えた。


これから先、誰に何を言われようとも、翔太のこの言葉以上に自分を救ってくれるものはないだろう。


幸せという言葉を初めて理解した。


だが、同時に幸せの儚さも理解した。


二人の絆以外、二人の関係を肯定出来るものがないこの恋には不安が多すぎる。

実は冗談だ、という笑い声がいつも付きまとい、胸を締め付ける。


明日には、翔太から女性を好きになった、と別れを告げられるのではないかという恐怖に駆られる。


そして、智貴と作ったバンドがインディーズながら人気を増し、メディアへの露出も増え、メジャーデビューへの話しが舞い込んで来た今、気が気でない。


秘密に育んだこの関係がなにかの拍子でばれてしまった時、翔太は、そして自分はそれに耐えられるのだろうか。


今のこの関係は、本当に正しかったのかさえ、疑わしくなってしまう。










冷え切った海風が慶介の身を攻めた。

周りの子供たちは楽しそうな笑い声をあげて、あたりを駆け回っていた。
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