Dear・・・
どれくらいの時間が経ったのだろうか。


涙は枯れ果てた。


風が大分冷たくなってきた。


きっと博昭は困ったあげく帰ってしまっただろう。


悪い事をしたと思いながら、ゆっくりと顔を上げた。


「すっきりした?」


横を見ると、笑顔の博昭がいた。


「あのさあ、うまいこと言えないけど、泣きたい時は泣けば良いんだよ。すっきりするし。俺、けっこう泣くし」


最後の言葉に自分で照れ、博昭は立ち上がった。


体についた砂を払い落とす。


慶介は何も言わずそれをただ見ている。


と、博昭と目が合った。


「あんま溜め込むなよ。胃、弱いんだし」


博昭が優しく微笑む。


そして、遠くで走り回るポチを呼んだ。


ポチは呼ばれると、すぐに博昭の元へと駆け寄る。


「ほら、頭良いだろ?」


ちょっと自慢気に幼げな笑顔で博昭が言った。


それに慶介が頷き、博昭は優しい瞳で慶介を見つめた。


「かなり冷えてきたし、もう帰ろ?」


博昭の言葉に、慶介は無言で立ち上がった。


二人はゆっくりと歩き出し、そのまま家へと向かった。
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