Dear・・・

朝[Kyoko.side]

あの日から一週間。


香子は一度も会社へ行っていない。


ご飯もほとんど食べず、一日のほとんどをベッドの上で過ごしている。


このままではダメなことぐらい香子も痛いほど分かっている。


家計を担っているのは自分。


あんな男には自分も子どもも任せられない。


しかし、体が動かない。


何かをしようと動くたび激しい頭痛に襲われる。


「香子、おはよう。今日も会社休むか?」


今日も、寝起きの治が香子の機嫌を伺ってくる。


香子は何も答えない。


いつもの事。


治は起き上がり、部屋を出ようとする。


「あ、やっぱり今日、少し出かけます」


何かしなければと焦る想いから、香子の口から言葉が出た。


治はその言葉に驚いて振り返る。


香子はゆっくりと起き上がり出かける準備を始めた。


何度も治は目的を尋ねるのだが、香子が口を開く事はなかった。


着替えをすませるとさっさと部屋を出て行った。


久々の香子の洋服姿に子どもたちは嬉しそうに駆け寄る。


香子は優しく微笑むと、そのまま家を出て行った。


車に乗り込み、発進させる。


向かう場所はただひとつ。


精神科と立てかけられた看板のある建物に、迷わず入っていった。
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