Dear・・・

夜[Keisuke.side]

夜十時。


スタジオに藤田が入ってきて練習の終わりを告げる。


五人はそれを聞くと、さっさと片づけを始め、帰りの準備に取り掛かる。


「じゃあ、お疲れ様」


礼人が誰よりも早く片付け終え、帰ろうとする。


まだ片付け終わっていない優人は、なんとか詰め込み兄の後を追う。


と、それを翔太が引きとめた。


「礼人待って!俺も帰るから途中まで乗せてって」


「あれ?今日は慶介と一緒に帰らないの?」


二人がセットなのは当然の様に礼人は不思議そうに尋ねた。


「ああ、親戚の家に寄る用あってさ。それがちょうど礼人ん家の方なんだよ」


そんな会話をしつつ、礼人と優人と翔太の三人はスタジオを後にした。


その間一度も翔太と慶介は目が合わなかった。


「翔太と喧嘩した?」


智貴が笑いながら聞くが、別に、の慶介の一言で会話は終わった。


気まずい雰囲気の中、二人もスタジオを後にした。


智貴ともすぐに別れ、一人、駅を目指す。


一人で歩く道は長く、寂しい。


いつもなら翔太と歩くこの道。


どこで間違えて今、一人でこの道を歩くことになったのだろう。


自分は誰を一番想い、誰が一番自分を想っているのか。


そんなことが頭の中を回っていた。
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