Dear・・・
しばらく歩いていると、慶介の背中に強い衝撃がきた。


よろけながら振り向く。


「慶ちゃん。湿気た顔してどうしたの」


晴れ晴れとした笑みの博昭がそこにいた。


その笑顔は慶介の心を晴れさせ、気持ちを楽にさせる。


「痛ぇよバカ。何してんのこんなところで」


口の悪さとは反面、慶介の顔は優しい笑みに包まれていた。


「彼女ん家に行った帰り。マジヤバいね。可愛すぎてヤバいね。好き過ぎてヤバいね」


聞いてもいない彼女との話をどんどんと話していく博昭。


慶介には考えられない恋人の事を第三者に話す行為に、苦笑いを浮かべる。


羨ましさと、自分の恋愛の再確認。


慶介の心の奥が博昭の発言一つ一つに締め付けられていた。


しばらくして着いた大船駅での乗り換えの時、急に博昭が思い出した様に行った。


「そういえば今日翔太は?」


「親戚の家行くっつって礼人の車に乗ってった」


湘南モノレールが来るまでの待ち時間、煙草を吸おうと二人は改札の外で火を付けた。


深く吸い、ゆっくりと吐く。


二人の会話は終わった。



何かがあるといつも近くで自分を気にかけてくれる博昭。


博昭なら自分たちの関係を知っても軽蔑の目を持たないのではないか。


自分一人では結論の出し切れない話。


博昭ならなんと言ってくれるのだろう。


慶介は、博昭になら話してもと頭をよぎった。
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