Dear・・・
「帰れつって、帰る訳ねえだろ。さ、行こう」


さっきの藤田の言葉などもともと聞く気が無く、智貴が言った。


「三人じゃ寂しいし、他も呼んでさ」


しかし、慶介と翔太は淡々と帰りの準備を進めていく。


「え?二人行かねえの?」


「俺、無理。婆ちゃん入院しちゃってさ。せっかくこの時間に終わったなら、見舞い行きたいし。ん、じゃあな」


と、慶介はそそくさと店を出て行った。


「で、翔太は?」


明らかな不機嫌な声で、智貴が言う。


「飲みに行く体力あんのお前ぐらいだっつうの」


呆れた声で翔太が言った。

そういう翔太の顔は、目の下に隈が出来、疲れが滲み出ている。


「とりあえず、来週のライブまでは我慢しろよ。来週まで毎日仕事入ってるんだから」


諭すように言う翔太の言葉に、渋々頷く智貴。


「それじゃ、俺も帰るわ」


智貴が渋々であれ納得したのを確認すると、翔太は帰っていった。


智貴はつまらなさそうに帰る準備を始め、一人残るスタジオでため息をついた。
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