Dear・・・

帰路[Syota.side]

翔太は一人歩く。


慶介の祖母が入院していた事を知らなかった事実に衝撃を受けていた。


そういえば最近慶介とまともに会話をしていない。


相手を縛り付けるあまり、相手の人格をなくしていた。


慶介をまるでモノの様に扱っていた。


慶介を一番想っているのは自分だという自信は揺るがない。


だが慶介を一番理解しているのが自分だという自信はない。


もしかしたら得体の知れぬあいつの方が理解しているかもしれない。


考え込みやすい慶介があいつに頼ってしまったことは分からなくもない。


そして、最近頻繁に博昭といる所を見る。


慶介は博昭に何を話しているのであろうか。


今の慶介の支えは自分ではなく博昭なのではないだろうか。


もしかして情が移ってしまってはいないだろうか。


しばらく考え、携帯をだすと発信ボタンを押した。



「もしもし博昭?」


「あぁ…珍しいじゃん、どうした?」


「博昭今ヒマ?」


「ヒマってか一人で横浜でぶらぶらしてた」


「じゃあさ、ちょっと話あるんだけど会える?」


「じゃあ俺丁度帰ろうと思ってたし三十分後に大船で落ち合おう」


「わかった」




その言葉を最後に電話を切った。


翔太はヘッドフォンをつけ、大船までの電車の間頭の中を曲で埋めた。


電話を切った博昭は、翔太の話を楽しみにした。
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