Dear・・・
「俺は別に隠す気なかったんだけど、慶介が誰にも言いたくないっつって話さなかったんだよ」


翔太は寂しそうな目をした。


「なのにお前に話したんだ…」


「でも俺と慶介は何でもねぇって!仲良いの昔からじゃん」


翔太がここまで悩んだ姿を見たことがなかった博昭は、どこか恐怖を感じた。


自分が慶介を翔太から奪う気がないことを懸命に伝える。


「別に博昭がどう思ってるとか言いたいわけじゃないよ。お前、女好きだし」


翔太は切なげな笑顔を浮かべる。


「たださ…慶介がお前の事好きなんじゃないかなって。最近ほとんど一緒にいないけど慶介のことなら大体分かるんだよ」


遠くを見つめて翔太が言う。


その顔はとても悲しそうだ。


「ちょっと前まではさ、大げさな話、三食何食ったとかさ、それ言える具合話してたのに…今じゃ、婆ちゃん入院したのすらさ…」


悲しげに煙草を吹かす。


モノレールが発車を伝えるが、博昭は深刻そうな翔太の顔に言い出す事が出来ず、見送る事にした。


博昭は、煙草を一口吸うと話だした。


「俺が婆ちゃん入院したの知ってるの慶介本人から聞いたわけじゃなくて、お母さんが言ってたからだし。だから、別に慶介は俺の事どうも思ってないって」


今にも泣き出しそうな翔太を何とか励まそうと、博昭が言う。


こんな弱気な翔太を見るのは初めてで、博昭自身戸惑っていた。


興味本位で話を聞こうとしていた自分を恥じた。


しかし、博昭の言葉は虚しく、翔太は力なく首を振った。
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