Dear・・・
「言ったろ。慶介の事なら大体分かるって。あのさ、何か言われたら――」


「何も言われねえよ!」


どこまでも悲観的な翔太の言葉を遮る。


相談原因に相談内容を話すのは気が引けたが、話が進みそうに無いこの状況に博昭は口を開いた。


「俺は慶介の相談乗ってるだけだよ。お前のそのねちっこさが嫌なんだってよ」


やはり、と翔太はさらに落ち込む。


二本目の煙草に火を付ける。


さすがに直接的過ぎたかと、博昭はまずそうな顔をした。


「いや…俺は別にそれが悪いとか言ってる訳じゃないよ。ただ慶介はそれが…」


慶介の事を分かっているといった博昭の口調に、翔太は悔しさから静かに言葉が溢れてきた。


「友情とかの話じゃねえのに、なんでお前に男同士の事が分かるんだよ」


「分かんねえよ、そんな異常なの」


翔太は黙った。


その言葉が体中に突き刺さる。


博昭は失言に気がつき、謝るがもう遅かった。


二人の会話が再開されることはなかった。


互いに視線を合わせる事なく、煙草を吸う。


次のモノレールが来るまで、博昭は懸命に言葉を捜していた。


どうして自分はこんなにも馬鹿なのだろうか。


親友を傷つけてしまったと、博昭は唇を噛み締めた。
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