Dear・・・
モノレールが到着し、二人は向かい合って座った。


その時、博昭がようやく喋りだした。


「あのさ…さっきはゴメン。興奮しちゃって…慶介はさ、ちゃんと翔太の事好きだよ。相談してて分かるもん」


「ありがとう」


恐る恐る言う博昭に、翔太は窓の外を眺めながら言った。


そして、再び沈黙になる。


博昭もこれ以上言う言葉が見つからず、窓の外を見る。


「あのさあ」


翔太が静かに話し出した。

博昭は声に翔太を見るが、翔太の視線はやはりは窓の外を見つめたままだ。


「何?」


「博昭の言いたい事は分かったけど、でも俺の言葉も覚えといて。慶介は博昭の事好きだから――」


またそれか、と博昭が翔太の言葉を遮る。


「だから、それは――」


「お願い聞いて」


翔太の真剣な眼差しに、博昭は口を閉じた。


「博昭を好きだとかは抜きにして…もし、慶介に何か言われても、お願いだから…慶介を傷つけないで」


悲しそうに言う翔太。


翔太は俯いた。


博昭はその姿に、慶介への深い愛を感じる。


同性と言うだけで、なぜここまで二人はすれ違うのだろうか。


互いに想い合っているのに、なぜそれをもっと伝えるあわないのだろうか。


自分には理解出来ぬ世界の中に、果てしない悲しさ、やりきれなさを見つけた。


「分かった。覚えとくよ」


博昭は小さく言い、翔太を見ていたその視線を窓の外へと向けた。


そのまま、翔太が降りるまで二人の間が再開される事はなかった。
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