Dear・・・

家[Keisuke.side]

祖母の見舞いから帰り、慶介はベッドの上で寝転がっていた。



階段から落ち、足を骨折してしまい入院をした。


家族の中では擦り傷の様な扱いで、特に心配はしていない。


そのため、わざわざ翔太には伝えなかった。


今日、祖母が入院だと言った時の翔太の一瞬見せた驚きの表情。


あれは祖母を心配しての驚きか、それとも入院を知らなされなかったことへの驚きか。



後者なのは分かっている。



わざと伝えなかったわけではない。


しかし、わざわざ伝えることでもない。


翔太と話したくないわけではないが、あえて話したいとは思わない。


今、慶介にとっては少し距離を置き、翔太を想っていることの方が楽だった。


もっと言うならば、博昭と翔太の話をしている時が一番楽しかった。


それは翔太を想う事が楽しいのか、それとも博昭といることが楽しいのか。


それは愛か情かは分からない。


今まで弟の様に思っていた博昭が、相談が出来る友人となった。


翔太を恋人に持つ自分は、もしかして、翔太個人が好きというよりも、男が好きだということなのだろうか。


翔太の時とはまた違う感情に慶介は戸惑っていた。


自分ではどうして良いのか分からぬ思いを抱え、頭に浮かぶはメールの相手。


今ごろどうしているのであろうか。


メールをしてみようか。


だが、また迷惑をかけるかもしれない。


博昭が好きなのか。


だが、翔太への気持ちは揺るがない。


煮え切らない想いを抱え、慶介はゆっくりと瞼を閉じた。


自分は異常だという、戒めの言葉を何度も唱えながら。
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