Ｄｅａｒ・・・

その瞬間、部屋のドアが開き、礼人と優人が入って来た。


博昭は漫画へ、慶介は雑誌へと視線を落とす。


部屋の妙な空気に礼人と優人は気づかない。


「何？お前ら読書家だな」


笑いながら礼人が言う。


「あ、そうそう。なんか智貴くんと翔太くんが藤田さんに頼んで、この後の練習なくしてもらうとか言ってたよ」


そう言い、優人は机のお茶を飲んだ。


博昭がその言葉に反応する。


「何で博くんが喜ぶのさ」


優人が鞄から薬を取り出した。


尋ねたわりには興味はなさそうだ。


「今日、撮影見学来るかわりに優人の練習付き合わなきゃいけなかったんだよね。これで彼女と遊びに行けるわ」


博昭が笑顔で話すと、優人は申し訳なさそうな表情を浮かべる。


そして、博昭の笑顔の分だけ慶介の顔は曇っていく。


涙が溢れそうになるのをこらえ、眠たそうにし、膝を抱えて顔を伏せた。


博昭に動揺してしまった自分が恥ずかしい。


翔太だけ特別なのではなく、やはり自分はゲイなのだと思い知らされた。


すると勢い良く、部屋のドアが開いた。


「今日ちゃんと練習なくなりましたー俺のおかげー」


扉の前で仁王立ちをしＶサインをする智貴。


幼稚に喜んでいる。


と、閉じかけていた扉が再び勢い良く開いた。


それは当然智貴の頭に当たった。


涙目になり頭を抱え、たまらずしゃがみこんだ。


開いたドアから笑う翔太が入って来た。


「嘘はいけないよ智貴さん。ごねてるだけのきみの交渉でどうやってもなくなりはしないから」


そして翔太は部屋の奥へと入って行った。


智貴はまだ痛いのか、なかなか手を離さない。


涙を浮かべた目で部屋の端の翔太を見る。


「冗談じゃん…マジ痛え…」


と、再び扉が開いた。


智貴は今度は背中を強く打った。


智貴のその痛がる状況に笑い転げる礼人。