Dear・・・
件名:暑中お見舞い申し上げます。
本文:最近どう?
七月に入りムシムシするな!
あ、北海道はこっちよりも涼しそうだな!
高校の夏を楽しんでくれ!







メール受信を告げた携帯を開くと治からだった。


添付された画像も見るが、その陽気さが今は鬱陶しく、返信する事無く携帯電話の電源を切り、ポケットへと閉まった。


それなりに人気はあるが、まだまだな知名度の慶介は特に芸能人だと騒がれることなく、孤独に浸り街を行く。


早く終わったと言っても外は日が暮れ、曇り空も相成って当たりは薄暗い。


その今にも泣き出しそうな曇り空はまるで慶介の心を映したようだ。


当ても無く、一人で歩いていくが、街の雑踏はうるさ過ぎる。


耳を塞ぎたくなる状況の中、聞きなれた声を耳にした。


声の方を向くと思ったとおり、博昭だ。


隣の女は先ほど言っていた彼女だろう。


楽しそうに歩く博昭は、周りの者など目に入っている様子も無く、慶介に気づくことはない。


満面の笑みを浮かべ、小柄な彼女と歩くその博昭の姿に、博昭の性癖を思い知らされ慶介は胸が痛くなった。


「そういや、俺さぁ結構頼られるタイプじゃん?」


「自分で言うかぁ?」


博昭の話に、女は満面の笑みで顔を覗き込む。


慶介は、自分が何をしたいのかは分からないが、バレない程度の距離を保ち博昭の後ろを付けていった。


聞き取りづらいが、確かに二人の会話は聞こえる。
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