Dear・・・
「だって俺、最近良く相談のってんだもん」


次の瞬間、聞き取りづらかったはずの声が、痛いほど慶介の耳に響いた。


「今ゲイの男の相談のってんだよねぇ」


「マジ?超キモいー」


「しかも、そいつ若干、俺の事好きっぽいんだよねぇ」


「キモッ!マジありえないんですけど!」


ケラケラと笑いながら二人はどんどんと進んでいく。


しかし、慶太はそれ以上後を追う事が出来なかった。


それ以前に、慶介は動く事が出来ないでいた。


無性に自分自身が恥ずかしくなり、自分と言う存在を消してしまいたくなる。


強張る体。


僅かに全身が震えだした。


やはりゲイは気持ち悪い存在なのだ。


信頼した相手の裏切り。


情が沸き、弟以上に対等の親友、それ以上の存在になりつつあった存在の卑劣な言葉。


だが、不思議と涙は出てこない。


ただ、今出来るのはその場に倒れないように立つことだけ。


慶介はそれだけに集中した。


行き交う人々が邪魔そうに慶介を見る。


そんな慶介の姿を、翔太は遠目で見つめていた。
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