Dear・・・

街[Syota.side]

街をふらりと歩いていた時、偶然博昭を見つけ声をかけようとした。


瞬間、後ろを追う慶介の姿に気づき、自然とその後を追っていたのだ。


あれだけ好かれている事を否定していた博昭からの発言。


何か確信的な出来事があったのだろう。


だからこそ、博昭に言っていたのに…


想像以上の最悪の事態に、翔太も動揺は隠しきれない。


そして、自分の気持ちをあざ笑われた慶介の心中を察し、掛ける言葉も見つからない。


慶介と同様、翔太もその場に立ち尽くした。


微妙な距離をあけて立ち尽くす二人の青年の姿は異様だった。


しかし、このままではらちがあかない、と翔太は行動に移した。


何も言わずに慶介の腕を引き、駅へと向かう。


突然の翔太の登場に、慶介の戸惑いは隠しきれず、何度か翔太に問いかけるが返答は何もない。


その代わり、翔太は慶介に何も尋ねる事は無かった。


二人は人を押しのけ、どんどんと進んでいく。


曇り空からバケツをひっくり返したかのように雨が降り出す。


しかし、二人が止まることはない。


涙か雨か、二人の顔を濡らしていく。


何とか駅に着き濡れたまま電車に乗った。


びしょ濡れの二人に周りからは冷たい視線が注がれる。


しかし二人は、気にする事無く雨に濡れていく街並みを見つめていた。
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