Dear・・・
しばらくして、以前の事を思い出した。


「ああ、お母さんが雑誌買ってきてあげた子?」


「それ。えー今日ライブやらはんねんて!行きたい行きたい!」


「アホか。横浜なんて行けるわけないやろ。その子らが大阪来んの祈っとき」


香子の頭に昨日の由香との会話を思い出した。


「そういえばお母さんのお仕事一緒にやったはる人、今日それ、行ったはるわ」


「え?ずるい!行きたい!」


「今度、な?その人に頼んで一緒に行ってくれる様、頼んだげるし」


「お母さんは行けへんの?」


「お母さんは興味ないわ…その人なあ、智貴くんが好きや言うてたで」


「えー智貴はいやや。やっぱ優人やって」


画面に釘付けになりながら綾が言う。


楽しそうに言うのだが全く香子の理解できない話だ。


「今、テレビに映ったはる人は誰?」


「右が慶介で、左が翔太、で後ろのが礼人人で…あ、これが優人!」


名前を言いながら画面を指していくのだが、香子にはどれも同じ顔に見えて仕方がなかった。


しかし、綾が楽しそうなのでとりあえず良しとする。


いつもは手伝ってくれる綾も今日はテレビの前から動こうとしない。


香子は一人、机に料理を並べていく。


そして、それを終えると、和也と治を呼ぶため階段下へと行った。
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