Dear・・・

直前[Keisuke.side]

まもなく、ライブ開始時刻。


会場のボルテージは最高潮に達していた。



トリの五人は控え室で最終の打ち合わせをしていた。


そして、大きな歓声と共にトップのバンドの曲が響き始めた。




「あーダメ。緊張してきた…博くんと変わって欲しいよ…だって僕ライブ経験少ないんだよ…」


不安に満ちた優人のその顔は今にも泣き出しそうだ。


その横で智貴は至って冷静で、礼人は不安そうな弟との背中をさすっていた。


「マジ、優人チキンだよな。ノミの心臓ってお似合いじゃん」


智貴が笑いながら言うと、礼人がきっと智貴を睨んだ。


優人はそれに返す余裕もなくただ、遠くを見つめていた。



人によって異なる歓声の大きさが、五人にプレッシャーをかける。


すると、入り口から藤田と共に博昭が入ってきた。


藤田の表情が誰よりも不安そうだ。


「博昭が激励したいらしいから、通しちゃったよ」


いつもの藤田なら有り得ない行動に、気が動転しているのが伝わる。


そして、それを言うと再び外へと出て行った。
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