Dear・・・
黄色い声援に包まれ、五人はステージに立つ。


智貴が挨拶をしている間、客席を見渡した。


先ほどまで自分のそばにいた博昭が、客席の奥に見える。


隣の彼女と楽しそうに、そして幸せそうに笑う。


確かに博昭の言葉に自分は傷ついた。


自分の異常さを再認識し、戒められた。


だが、博昭は自分の前では以前と変わらずにいてくれる。


博昭は聞かれた事を知らない。


あの言葉を聞いてしまった自分がイケなかったのだ。


あれさえ忘れれば、今まで通りの生活に戻れる。



慶介の中で何かが吹っ切れた。


優人のカウントで曲が始まった。


慶介は久々に心からの笑顔で演奏をした。


その姿を翔太は横で見つめていた。


慶介の笑顔を奪っているのは、自分ではないのだろうか…


演奏に集中出来ず、慶介の事を考えてしまう。


そして、翔太は一つの決心をした。


慶介と少し距離を置こう…
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