Dear・・・
手で涙を拭う。


部屋のドアノブへ手を掛けたとき、ふと、振り返り翔太の目を見つめる。


「俺は、翔太の事が一番大切だから…じゃあ…後で…」


そう言い、慶介は部屋を出て行った。


玄関の花瓶に花を生ける翔太の母。


慶介はサングラスを掛け、泣き顔を隠す。


「あら、もう帰るの?もっとゆっくりしていけばいいのに」


「夕方から仕事がありますから」


そう言い、翔太の家を後にした。




蒸し暑さの中、蝉の声がやかましく鳴き響く。


慶介は、果てしない孤独に駆られていた。
< 181 / 214 >

この作品をシェア

pagetop