Dear・・・
件名:(non title)
本文:今すぐ電話できるか?







「ちょっとごめん」


慶介はそれだけを言うと、店を出て行った。


騒がしい店内。


礼人以外、慶介が店を出た事に気づく人など誰もいない。






店を出てすぐ、治に電話を掛けた。


非通知拒否設定にされて以来の久しぶりの電話に、慶介は緊張していた。


何度もなる呼び出し音に、焦らされる。





ようやく治が出た、と思ったとき三人組の女性に話しかけてきた。


「ここらの人?うちら茨城から来てて場所よくわかんないんだよねえ」


慶介に近づき話しかける。


電話口からは何度も慶介を呼ぶ声がする。


「一緒に花火しよ?」


別の女性が言う。


「え?ていうかもしかしてO・C・Tの慶介じゃない?」


また別の女性が叫ぶ。


女性たちは興奮し、慶介を取り囲む。


そのいきなりの事に、慶介は驚いて電話を切ってしまった。


「ごめん。今、忙しいから」


そう言い慶介は女性をかきわけ逃げる様に去って行った。


後ろからは女性たちのやじる声が聞こえてくる。


しかし、その声は慶介にはどうでも良かった。


隣接する駐車場へ行く。


外壁につけられた非常階段。

ここなら誰にも邪魔されそないだろう。


慶介はその階段を上っていき、一番上まで来たところで腰掛、ゆっくりと携帯を開いた。
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