Dear・・・

新潟[Osamu.side]

新潟の実家に来て数日。


今日は兄夫婦も訪れ、大人数での宴会となった。


香子の兄と言っても治より一回り以上下なのだが。


そんな兄の嫁は治の二つ下。


香子、治夫婦とは間逆といった感じだ。


肉親に囲まれ、だんだんと香子も落ち着き、お酒の力も相成って頻繁に笑顔を見せるようになった。


「うちの旦那若いから浮気されたら困るわあ」


兄嫁が笑いながら言う。


「浮気も男の解消じゃって」


冗談交じりで兄が言う。


香子にとっては全く笑えない話だ。


「今、携帯もあって出会い系サイト言うところでいくらでも相手は見つかるそうやの」


父もその話に混じりだした。


治も、入りきれない話題に苦笑いを浮かべる。


「でもそういうのも暗証番号とかで携帯自体使えんようにしたらなんとかなるやろ」


兄嫁が言う。


「おい、勝手に暗証番号変えるなよ」


兄が言う。


香子は心の中で、早くこの話題が終わればと願っていた。


やけになりジョッキ一杯のビールを一気に飲み干す。


「変えたまずいの?変えたろうかな。数字何にしよう。せや、香子さんは暗証番号四桁決めれるとしたら何にする?」


「え?」


いきなりの話に香子は言葉に詰まる。


「自分も忘れないように誕生日にしますかね」


瞬間、しまった、と思った。


どうせ治の事だ。


暗証番号の意味も分からず思い付く事はないだろうと高を括り、治の変更した暗証番号は、綾の誕生日にしているのだ。


恐る恐る治を見る。


が、治は聞いていなかったようにビールを飲み進めていた。


香子は一安心し、どうにか話題を変える努力をした。
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