Dear・・・

電話

「もしもし、治さんですか?」


「もしもし、慶か?」


「あの――」


「すまん!」


話を切り出そうとした慶介の言葉を遮った。


「何がですか?」


「もうメールも電話も出来ない!」


「え?何言ってるんですか?もしもし?」


いきなり告げられた別れに、慶介は理解しきれず焦る。


「もしもし、慶介さんですか?」


治の声が聞こえていた電話口から、治に代わり少しなまった女性の声が聞こえてきた。


慶介はすぐに気がづいた。

妻、香子の声だ。


「え?…え?」


驚きのあまりうまくはなせずどもる慶介。


「鈴木慶介さんですか?鈴木慶介さんですよね?」


慶介のはっきりとしない声に苛立つ香子は、口調は一層きつくなる。
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