Dear・・・
「やっぱり慶介だ。何してるの、こんなところで」


翔太がそこにいた。


どうして翔太がここにいるのか。


そんな事は慶介にはどうでも良かった。


ただこの偶然の出会いに運命なんて言葉を重ね、嬉しくてたまらなかった。


そして、その女々しい自分を心のどこかで嘲笑っていた。



翔太はゆっくりと慶介の下へと近づいていく。


慶介だけに分かる翔太の甘い蜜のような香りが、慶介の脳を痺れせる。


翔太は優しく慶介の頬へ手を添える。


「やっぱり、すごい冷たい。鼻とか超真っ赤だよ。いつからここにいるの?」


翔太が優しく笑みを浮かべ、慶介を見つめる。


その瞳に慶介は吸い込まれそうになる。


「結構前かな」


動揺しているのに気づかれないようにと、至って冷静に頬に添えられた翔太の手を離させた。


ゆっくりと立ち上がり、数歩前に進み翔太に背を向ける。


その瞬間、翔太の顔が笑みを失ったことに慶介は気づかない。
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