Dear・・・

駐車場[Keisuke.side]

慶介から携帯を奪い取ると、そのままの翔太は勢いに任せてそれを地上へと叩きつけた。


辺りに痛々しくその音が響く。


「お前、何してるんだよ」


翔太が声を荒立てて尋ねる。


ここまで感情的になった翔太を見たのは初めてで、慶太は恐怖のあまり何も言うことが出来ない。


何も言わず、ただおびえた瞳で見つめる慶介。


翔太はそれ以上何も言う事が出来なくなった。


当たり所のない苛立ちに舌打ちをし、そのまま下へと降りていった。


翔太が去り、呆然と立ち尽くす慶介。


この数ヶ月の事を思い返す。


様々な事が起きた。


様々な事をした。


翔太は距離を置こうと言った。


しかし、翔太は今も自分の前にいる。


慶介は自分のしてきた事を思い、突如、えもいわれぬ罪悪感に押しつぶされそうになった。


「待って!」


慶介は叫び、翔太の後を追い駆け下りた。


今、一番大切なものを手放してはいけない。
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