Dear・・・
最後はもう消えそうな声で囁いた。


やはり交通の激しい道路は一切二人に静寂を与えない。


「俺は慶介の真剣な気持ちに答えようと思って色々考えてたのに…軽々しい言葉じゃ伝わらないって…」


翔太は大きく息を吸った。


「俺は慶介を愛してる」


慶介はその言葉に、涙が溢れ出した。


今まで、翔太の口から聞くことの出来なかった言葉。


場面が違えば、その言葉は甘く、優しく耳に響いただろう。


しかし、今は体中を突き刺す。


いつもあれほど大人ぶっていた翔太とはかけ離れた、幼稚で女々しいその姿に、数ヶ月前、悪夢にうなされ続けていた自分に、重なる。


どうしてここまで同じ気持ちだったのに、理解しあう事が出来なかったのだろう。


どれもこれも自分を傷つけないように余裕ぶっていた自分自身のせいだ…


「こんな辛い思いするなら、出会わなきゃ良かったのかな…」


声を震わせながら慶介が囁いた。
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