Dear・・・
だが、それも一瞬で翔太はすぐに笑顔に戻った。


「授業が休講になったから、友達に送ってもらいがてら、お茶してたんだ」


その友達とは男なのだろうか。

それとも、女なのか。


女ならばきっと翔太に気があるに決まっている。


もしかしたら、翔太自身、その女に気があるのかもしれない。




慶介の頭にいけない妄想ばかりが広がって行く。

聞けない疑問ばかりが頭を駆け巡る。


返答をしない慶介に、翔太は寂しげにベンチに座った。


「煙草吸い過ぎだよ」


座ったベンチの足元に散らばった吸殻を見て翔太が言った。


しかし、返答はない。


ゆっくりと翔太は顔を上げた。


だが、そこにあるのは自分ではなく、遠くを見つめた慶介の背中だけ。


「もうすぐ練習だし行こうか。俺、近くに車止めてるから」


翔太に背を向けたまま言い、慶介は歩き出した。



翔太は急いで立ち上がり、慶介の後ろをゆっくりとついて行く。
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