Dear・・・
エピローグ
雲一つ無い青空。


海のよく見える丘の上に、古びた建物が佇んでいる。


周りの自然とは対照的な無機質なそれは、その場にはあまりにも目立つ。


周辺に看板はなく、一見何のための建物なのかは分かりかねる。


とは言え、人里離れたこの土地に人の姿がある訳もなく、この建物を気にする者などいない。


辺りは蝉の鳴き声と波の音に包まれ、穏やかと言う言葉が良く似合う。


静かな時が流れる。


すると、建物の一室の窓から楽しげな青年の笑い声が聞こえてきた。


その青年は、ベッドに上半身だけ起こし、視線を窓辺に向け話をしている。


ベッドサイドに置かれたラジオから軽快な音楽が流れる。


と、部屋のドアが二回ノックされ、扉が開いた。


会話を邪魔され、笑顔から一転し青年の表情は曇る。


視線をドアへと移し、誰かと伺う。


白衣を着た女性が部屋へと入ってきた。


「今日も元気良いわねえ。翔太君と何話してるの?」


ベッドサイドに立ち笑顔を向ける女性を、青年は不機嫌そうに見上げる。


女性はそれに慣れているのか、青年の嫌そうな顔を気にしない。
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