Dear・・・
二十歳を超えた男性とは思えないほど、その姿は幼く、ある意味で異様だ。


しかし、女性はその姿を軽蔑するでもなく、むしろ自分の非を受け入れ、優しく青年の背を撫で囁いた。


「邪魔してごめんね」


すると、青年は顔を上げ女性の目を見た。


やはりその目は、少し潤んでいる。


「そろそろ診察の時間なんだよね。ちょっとだけ、翔太君とのお話中断していいかな?」


女性は、優しく微笑みながら言った。


だが、青年は首を横に激しく振り、その言葉を受け入れようとはしない。


再び顔を伏せる。


「俺、診察嫌い。翔太とずっと一緒にいる」


すると、女性は優しく青年の肩に手を置いた。


「翔太君も早く慶介君に良くなってもらいたいから、診察に行って欲しいって思ってるわよ」


その言葉に、青年は顔を上げ窓の方を見る。


そして、しばらくすると、納得したように頷く。


「翔太のために行くんだからね」


「それでいいのよ。先生も翔太君のために早く直ってもらいたいから」


女性はベッドの下に靴を揃える。


青年はそれを履くと、ベッドサイドのカーディガンを肩から羽織った。


そしてゆっくり立ち上がり、大きく伸びをする。


女性に先導され、部屋を出て行く。


「あっ」


思い出したように青年が振り返る。


「翔太、すぐ戻ってくるからね」


優しく微笑み、そう部屋に言葉を残した。
< 212 / 214 >

この作品をシェア

pagetop