Dear・・・
「慶介、話聞いてる?」


翔太の声で慶介は我に返った。


「ああ、聞いてるよ。…何だっけ?」


「聞いてないじゃん」


拗ねた翔太は窓の外へと顔を向ける。


街灯の明かりに照らされる翔太の横顔は、切なく今にも泣き出しそうだった。



急に黙り込んだ翔太のために何か話そうと思っても、慶介は気の利いた話題の一つも浮かばない。


浮かんでくるのは、嫉妬にまみれた卑しく女々しい言葉ばかり。


翔太が友達と話していた間、自分は冷たい風にさらされ、翔太のことを想っていたんだ。


翔太はどれだけ自分の事が好きなのか。


友達というがそれは、本当に友達なのか。


女友達はどれほどいるのか。



こんな事が聞けたらどんなに気が楽だろうと、小さくため息をついた。



無言の車内に虚しく曲だけが流れる。
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