Dear・・・
その後も互いに言葉を交わすことなく、練習スタジオに着いた。


スタジオの駐車場には一台既に停まっていた。


「礼人もう来てるんだね」


慶介がやっと口を開いた。


「本当だ。まあ、どうせ今日も用事なんてバイトだけだろうしね」


礼人は慶介と智貴のバイト仲間だった。


高二の時、智貴と慶介が一緒にバイトを始めた。


そこにいたのが礼人。


家庭の事情は知らないが、高校には行かずに一人暮らしをしていた。


慶介と智貴と同い年なはずなのに、礼人は落ち着いた大人な雰囲気を醸し出していた。


その空気に惹かれ連み始めた。


何も興味がないようで、ギターに関してはプロ並みの技術を持ち、作曲もしている。


当然、大学に進学はしておらず、フリーター。


我が道をいくその生き様は本当に格好良かった。
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