Dear・・・
いつからだったか、慶介は自分に対し冷たくなった。


昔は泣き虫で、翔太の方がいつも慶介を護っていた。


大人になったと言われれば、そうなのかもしれない。

自分への愛が薄れてきたのだと言われれば、それもまた納得できる。


一ついえる確かなことは、最近、慶介の背中を見つめることが多くなっていた。






まもなく時計が七時を指そうとしている。


いつもは早い弟の到着が遅く、礼人は少し不安そうに扉を見つめていた。


四歳下の優人は、礼人にとっては赤ちゃんも同然で、いつも心配の対象だった。


礼人が電話をかけてみようと起き上がったそのとき、息を切らして優人が飛び込んできた。


「ごめんなさい。先生に残されちゃって」


少し大きめの学ランを乱し、額からは汗が滲み、呼吸は整う気配をみせない。


礼人は起き上がり、空いた場所に優人を呼ぶ。


そして、鞄からお茶を取り出しそのまま手渡す。


優人はおいしそうにそれを飲み、ようやく息が落ち着いてきた。
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