Ｄｅａｒ・・・
慶介は疲れた翔太を気遣い、翔太の楽器を持ち、トランクへと積み込んだ。


「翔太疲れただろ？」


車に乗り込んだ慶介は、優しく翔太の頬に触れてみた。


翔太はその手に照れ笑いを浮かべる。


見詰め合うその目に照れつつ、徐々に顔は近づいて行く。


だが、鳴り響いた車のクラクションで、二人はすぐに離れた。


後ろを見ると、礼人と優人の乗った車が別れを告げていた。


「俺らも行くか」


慶介は礼人の車の後を追って車を出した。


バックミラーを見ると、智貴はこっ酷く藤田に絞られているようだ。


「藤田、毎回同じ話するけど、よく智貴も同じ話に突っかかっていけるよな」


笑いながら慶介が言う。


しばらくの間は車内に話し声があったが、すぐに静かになってしまった。


翔太は眠たそうに外の景色を眺めている。


暗がりの中、行き交う車のヘッドライトで照らされるその横顔は妖艶で、運転しつつも慶介の視線は翔太の方へと揺らいでしまう。


だが、慶介の視線に翔太は気付いていない。


前方の信号が赤に変わり車を止める。


信号を気にしつつも、やはり視線は翔太へと向いてしまう。
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