Ｄｅａｒ・・・
こんなに近くにいるのに、遠くに感じる存在。


切なさの中、慶介はささやく様に翔太の名を呼んだ。


その声はあまりにも小さく、周りの雑音にかき消されてしまいそうなほど。


もしかしたら、その声は心で言ったもので、口には出ていないかもしれない。


それほどの小ささ。


すると、翔太が慶介の方を向いた。


その瞬間、運転席から身を乗り出し、慶介は翔太にそっと口付けをした。


「いきなりだな」


翔太は照れ笑いをし、鼻を掻く。


そして慶介からゆっくり視線をはずした。


「青に変わったよ」


翔太に言われ、慶介は車を出した。


翔太はまだ恥ずかしそうに、笑みを浮かべて外を見ている。


何度となく交わしている口付けをいまだなれない翔太のその初さが、慶介にはたまらなく愛くるしかった。


その後、会話がされることはなく、時が流れた。



しばらくして翔太が腕を伸ばし、大きく欠伸をした。


「眠いなら寝て良いよ」


「でも…」


「俺は大丈夫だから」


優しく言い、翔太の頭を撫でる。


すると、翔太は安心して、返事もままならず、そのまま眠りについた。
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