Dear・・・
慶介はバックミラーで翔太の背中を見た後、振り返ることなく、車を走らせた。








細い路地を走らせ、まもなく家に着いた。


商店街は静まり返り、斜め前のコンビニが眩しく光っている。


少し止め辛い狭い駐車場に止める。


慶介は一息つき、車から降りた。


すぐ近くの腰越海岸からの潮の香りが鼻をかすめる。


深く息を吸い込みトランクから荷物を降ろした。


すると、後ろから名前を呼ばれた。


振り返ると、そこにいるのは隣に住む博昭だ。


翔太と同い年とは思えぬほど幼い笑みで慶介のもとへと近寄ってくる。


「こんな時間まで練習なの?未来のスターは大変だね」


その無邪気な笑みに、慶介の心は安らぐ。


「智貴が向こうの人に突っかかって長引いただけで、ほとんど練習してねえの」


「めんどくさそう」


渋い顔を浮かべる博昭。


それに、慶介は自然と柔らかい笑みが浮かぶ。


「じゃあ、ゆっくり寝ろよ」


ゆらゆらと手を振り、博昭は家へと入り、慶介も自宅へと入って行った。
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