Dear・・・
家族を起こさないようにと、二階の自室に静かに上がる。


荷物を部屋に無造作に置き、すぐ風呂場へ向かった。




冷えた体を温めるため、湯船にゆっくりとつかる。


あまり大きくない風呂場のため、身を丸め膝をかかえる。


そしてぎゅっと、唇を噛み締める。


翔太がいない一瞬一瞬が虚しく、そして恐怖を感じる。


翔太のぬくもりをどこかに探してしまう。


一体自分は翔太の何を求めているのだろうか。


考えれば考えるほど胸が苦しくなる。


顔を伏せた。


汗か涙か、頬を伝う。


どうにかして頭の中の事を取り去ろうと、膝に頭をぶつけてみるが効果はない。



しばらくして湯も冷えだしたため、体を洗い、慶介は部屋へ戻っていった。


そしてそのままベッドへと倒れこんだ。


鞄から携帯を取り出す。


メールが一通来ていた。


そのメールは一先ず置いとき、先に翔太へメールを打つ。


打ち終えた携帯はそっと閉じられ、少し遠くの枕の横へと置かれた。


ぐっと伸ばした慶介の腕をまたぐように愛猫ハツが寝そべってきた。


慶介は空いている方の手でハツを撫でる。


心地良い体温に酔いしれるのだが、当然ながら翔太とは全くの別物。


翔太の温もりが欲しい。


心の中で叫ぶ。


この先の自分たちはどうなるのだろうか。


相手を信頼できぬまま付き合っていくのはどうなのだろうか。


かといって、翔太と今の関係を終わりにすることも出来ない。


別れる事も続ける事もためらい、一番愛するものを疑う。


慶介はこんな弱い自分が憎くて仕方なかった。





様々な事が頭を駆け巡り続けるが、睡魔に負け、そのまま眠りについた。


夢の中では何も不安なく愛し合いたい。


そう願いながら。
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