Dear・・・
俺は慶介とつるんでまともになった。


母さんや親父の金にたかるのをやめるため、高二の時、慶介と二人でバイトを始めた。


そこで礼人に出会った。


礼人は何にも興味がなさそうな無気力なやつだった。


あいつはギターを持つ時だけが生きている様にみえた。


礼人の曲は切なげで俺の心に響いた。


みんなに聞かせたいと思った。


だが、礼人は歌が下手だと嫌がった。


だから、俺は単純にバンドを結成した。


顔と曲でインディーズながらすぐに人気が出た。


バンドを結成して四年。


メジャーデビューの話がきた。


俺は生まれて初めて声をあげて喜んだ。


あんなにも感情的になるのはこの先、二度とないだろう。


気の合うやつらと、好きなことやって飯が食えるかもしれないなんて最高だった。


だが博昭だけ、脱退した。


理由は特に聞かなかった。


気の合う仲間が一人減るのは寂しかった。


だが、優人が変わりをすると言ったら、博昭はたまに教えにスタジオに来た。


俺はそれで満足だ。


この先も、年をとってジジィになってもこいつらと一緒にいられたら本当に最高だろう。


少なくとも、こいつらと出会えて、俺は生まれてきた意味があったと感じた。
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