Dear・・・
毎月、金が送られてくるが、それにはほとんど手をつけずバイトをした。


そこで智貴と慶介に出会った。


智貴はガキみたい純粋に俺の曲を誉めてくれた。


こいつがいるならバンドも良いと思った。


デビューの話が来た時、最高だった。


自分が初めて認められた様な気がした。


だが、博昭は抜けた。


正直、俺はムカついたし、理解が出来なかった。


その時、あいつが俺の家に来た。


顔がアザだらけで、驚いた。


真面目なこいつが喧嘩なんてするわけないのにと。


実際そうじゃなかった。


親父と母親にやられたらしい。


言葉を濁したがこれが初めてでもないようだ。


だが、あいつはそれを伝えに来たわけではなかった。


俺のバンドのメジャーデビューの噂を聞いて、それを祝いに来た。


「ありがとう、優人」


初めて俺は優人を名前で呼んだ。


穴も埋めがてら、優人をドラムに誘った。


俺の幸せのおすそ分け。


優人は喜んで受け入れた。


そして、優人に俺の家に住む様言った。


金はたんまりあるから、もし両親がキレても優人を高校を卒業させてやる事も出来る。


その時、優人は泣いて頷いた。


この世の中で自分が一番惨めで不幸な奴だと思っていたが、勘違いも良いとこだ。


優人以上に不幸な奴もいるだろうが、少なくとも優人は俺以上に辛かったのだろう。


優人は音楽の経験も、ましてドラムの経験もなかったが、センスの良さですぐ上達した。


それを担ったのが博昭だった。


俺は最高の仲間と最高の弟に囲まれていた。


俺の人生が再び動き出した。
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