Dear・・・
勉強だけの僕はこの状況から抜け出すすべが分からなかった。


そのまま高校に上がった。


待遇は変わらず、アザは消えなかった。


出口のない闇をさ迷っていた。


街を歩いていたある日、一枚のビラをもらった。


インディーズバンドのライブの告知。


そのビラの写真の一人に見覚えがあった。


大人になり、皮肉にもお父さんに似ているそのギタリストは、僕の憧れの人だった。


僕は両親に黙ってそのライブに行った。


お兄ちゃんの栄光を見に。


超満員のその会場は、お兄ちゃんの凄さを物語っていた。


ファンからデビューするという噂を耳にした僕はどうしてもお兄ちゃんに会いたかった。


その日、家に帰ると、門限が過ぎていると殴られた。


お兄ちゃんの家を知りたいと言ったら更に殴られた。


酷いものだったが、その日の痛みは屁でもなかった。


僕は家中を探し、お兄ちゃんの痕跡を見つけた。


その足でお兄ちゃんの家へ向かった。


お兄ちゃんは僕の顔を見て驚いていた。


そりゃこんなにアザだらけなのだから仕方ない。


アザの理由を説明したが、今日の本題はそれじゃない。


おめでとうと伝えた。


お兄ちゃんは嬉しそうだった。


そしてバンドに誘ってくれた。


僕は本当に嬉しかった。



喜ぶ僕にお兄ちゃんが、家に来いと行った。


僕は言葉にならない嬉しさに涙を流した。


僕もまだ泣くことが出来た。


僕の人生に一筋の光が差した。


お兄ちゃんと暮らし、お兄ちゃんとバンドをするこれからはきっと幸せだ。


僕の人生はここから始まった。
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