Dear・・・

慶介の場合

俺は親父を知らない。


死んだのは五歳の時だが、生きてる間は仕事ばかりでほとんど家にいなかった。


だから全く悲しくなかった。


姉ちゃんとお母さんは泣いていたけど、俺は理解出来なかった。


婆ちゃんの家に行き、周りは俺を哀れんで見ていた。


泣かない俺に気を使っていた。


逆にその目の方が悲しかった。


俺はその目が嫌で他人が嫌いだった。


冷ややかな哀れみの目は俺を異常に思わせた。


心配している偽善者の目は俺をあざ笑っているようだった。


その中で翔太と博昭の目は俺の救いだった。


智貴は俺と同じで、親父がいない分俺を変に見る事がなかった。


礼人と優人も詳しくは知らないが、境遇が似ているのか親がいないのか、俺を特別視しなかった。


本当に居心地が良かった。
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