Dear・・・
第一章・不安

学校[Keisuke.side]

携帯電話のバイブが机を鳴らす。


慶介は目を覚ました。


小さく伸びをし、遠くの教壇で弁を取る教授を見る。


そこには、寝る前と同じ、楽しそうに美術に関する薀蓄を述べる教授の姿があった。


美術史の授業なんて取った覚えはないのにとため息をつき、携帯を開く。


メールの差出人の名前を見た慶介の顔は、わずかに優しい笑みを浮かべた。




「お前寝すぎじゃね?」


そう言い、隣に座る智貴は慶介を見た。


しかし、慶介はメールを打つのに夢中で、ただ曖昧にそれに答えるだけ。


「俺、本当ヒマなんですけど」


つまらなさそうに智貴は伸びをする。


だがその行動にも、慶介は無反応。


「メールの相手女?」


少しでも返答が欲しく、言ってみる。


「違う。翔太」


それだけ言うと、慶介は再び黙ってしまった。


会話は全く続かず、智貴は諦めて黙り込んだ。


ちらちらとたまに視線を慶介に送ってみるが、智貴が慶介と目が合うことはなかった。
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