Ｄｅａｒ・・・

中華街[Keisuke.side]

暖かい日差しに照らされながら、慶介は一人、昼の中華街を歩いていた。


智貴の母が経営しているバーがこの近くにあり、今日の夜、メンバーを含めた大勢で飲むことになっていた。


落ち着いて散歩をしたい気分に、大学の授業を勝手に午前で引き上げ早めに来てみた。


しかし、平日だというのに中華街は意外と混みあっている。


デビュー前とは言え、インディーズの頃から結構な人気があるため人混みには慶介を一方的に知っている人もいたりする。


二人組の女子高生に握手を求められ、静かな時を過ごす雰囲気ではない。


慶介は逃げる様に中華街を抜けた所にあるカフェに入って行った。


飲み物を受け取ると、二階の窓側の席へと向かった。


その席は窓に向かってソファが置かれており、窓から差し込む日差しに半ば外にいるような気分を味わえる。


ソファに深く座り、やっとゆっくりとした気分を味わえた。


顔を上げて人混みを眺める。


男女の恋人が楽しそうに腕を組み歩道を歩く。


その姿に自分と翔太を重ねてみる。


しかし、その光景が景色に馴染むイメージがもてない。


普段の生活で度々見せしめられる自分たちの異質さに、深いため息をついた。


そして、気を紛らわすため大した用事もないのに翔太へメールを送ってみる。
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