Dear・・・
すぐ返信されるメールに慶介の顔がほころぶ。


しかし、その顔は一瞬にして強張った。


くだらないやり取りの最後に打たれた、話したい事がある、という一文。


昨日も会った。


一昨日も会った。


メールで話せないような話などを抱えている素振りは、一切なかった。


一体何を話すというのだろうか。


好きな人が出来たのだろうか。


二人の関係に限界を見てしまったのだろうか。


いけない方向に頭は働く。


とりあえず、この場で待ち続ける事だけは伝えた。


翔太がここにくるまで、まだまだ時間はある。


深く考える事を諦め、慶介は鞄から読みかけの本を取り出した。


ゆっくりと本を開き物語の世界へ入っていく。


物語がクライマックスに近づくにつれ、次へ次へと急く慶介の興味は読むスピードをどんどんと上げ、まわりへの興味をなくさせた。
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