Dear・・・
メールを打ち終えた慶介は、再び机に伏せ目を閉じた。






瞼に映るは、愛しい恋人の姿。



肉体関係こそないものの、慶介の翔太への愛は確かなものだった。



「慶介」と呼ぶ少し独特な優しい声。


黒く大きな瞳。


ギターの弾き過ぎでタコの出来た骨張った手。


首筋に顔を埋めたとき香る甘い匂い。


優しくしっかりと抱きしめてくれる細身ながら筋肉の付いた体。


そして、甘くとろけそうな柔らかな口唇。


翔太のすべてが愛おしく、翔太のすべてが慶介の脳を痺れさせた。



誰かと話せば、一人でにやけてしまう。


「翔太」と口にするとそばにいない寂しさに胸が締め付けられる。


そして、この幸せを誰とも共有出来ない事に悲しくなる。








教室に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。


慶介は甘美な妄想から現実へと引き戻された。
< 7 / 214 >

この作品をシェア

pagetop