Dear・・・
すると翔太は強く慶介を抱き寄せた。


周りなど気にすることはない。


慶介は驚き押し返そうとするが、翔太の力は思いの他強い。


「誰も俺らの事なんか気にしてないから」


慶介の心を見透かしたように翔太が囁いた。


慶介はその言葉に、目を閉じ翔太の温もりを体で感じた。


「何に不安を感じてるの?」


優しく翔太が耳元で囁いた。


「俺らの関係?」


その言葉を聞いた瞬間、慶介は返す言葉を失った。


もしここで、そうだと肯定したらどうなるのであろうか。


翔太を信じて素直に言うべきだろうか。


しかし、不安や迷いを感じている事で、翔太を傷つけかねない。


じゃあ、と別れを切り出されるかもしれない。


翔太の言葉に重なって爆音を鳴らしバイクが通ったので、慶介はあえて何も返事をせず聞こえないふりをした。


しばらく沈黙が続く。


「そろそろ行こうか。そろそろみんな集まりだしてるかもね」


いつまでも抱き合っている事など出来るわけもなく、翔太が慶介から離れた。


そして、携帯で時間を確認する。


一方慶介は、翔太がいなくなった喪失感に果てしない悲しさと寂しさを感じていた。


そんな慶介に翔太は気づかない。


「あ、もう八時近いし。智貴から電話きてるし」


心配そうに翔太が言った。

慶介は鞄から携帯を取り出す。
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