Dear・・・
「俺の所にも智貴から着信きてるよ」


おそらく集まっていないのは慶介と翔太の二人だけなのだろう。


だが、特に集合時間が決まっているわけではないので、二人は焦ることなく店へと向かう。


ここからはどんなにゆっくり行こうと十分ほどで着くところ。


二人は並んで夜空を見上げ無言で歩いて行った。


都会の空は星一つなく、暗闇がただ広がっていた。


そしてまもなく店に着いた。


互いに言葉を交わすことなく、慶介は店のドアを開けた。


「おまたせ」


しかし、中からの反応はない。


メンバーの姿もその友人たちの姿も客すら見当たらない。


「あれ、誰もいない」


慶介は店内を一通り眺める、奥へと進んで行った。


翔太もドアにもたれかかり店中を見る。


人の気配はまったくなく、店内は静まりかえっていた。


すると、店奥の階段から智貴が降りてきた。


「みんなは?」


翔太が尋ねる。


「みんなは?じゃねえよ。何回連絡したと思ってんだよ」


「で、他は?」


慶介が尋ねる。


「今日、親父が来る事になったから、飲むの明日になったんだよ。どうせお前らヒマだろ?」


「まあな。…親父さん帰ってくるの?」


「違うよ。その間逆」


そういう智貴は頭を掻き、場の悪そうな顔をしている。


「そうか、んじゃ俺ら邪魔だな」


翔太はもたれていたドアを開けた。


「ああ、悪いな。それじゃ、明日」


智貴が見送る中、二人は店を出た。
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